前回の労務課のお仕事②入社手続きに続き、今回は退職手続きになります。
退職手続きは、会社がオフィスだけで完結しない業種や社員数の多い企業の場合、突然の退職や休職からの退職など退職にもパターンがあります。
パターンごとに退職に必要な書類や対応が異なりますが、今回は通常の退職を想定してお話しいたします。
他社でも通用する力
保険関係の業務処理は、基本的にどの会社でも一緒なので、1回覚えてしまえば、どこの会社に転職しても活躍することができます!
健康保険
まずは、健康保険証を退職日に回収する必要があります。
しかし、退職前は有給消化する場合が多いため、退職日に出社する方は少ないです。
そのため、健康保険証は、退職者から郵送での返却になります。
一番加入者が多い協会けんぽでは、健康保険証を回収したのちに、協会けんぽでに会社から郵送する必要があるため、必ず退職者から回収する必要があります。
もっとも、回収できないからと言って、直ちに問題になるわけではありませんが、回収率が悪いと…
協会けんぽからご連絡が入りまーす!
曰く「ちゃんと回収しなさい!」と、怒られます。。。
なので、回収率が悪いと、健康保険証の回収する方法を色々考えないといけません。
例えば、退職手続きの案内を作成し、健康保険証を必ず返送するように強調するとか、返信用封筒を退職者に渡して、なるべくポストインで回収できるようにするとかいろいろ工夫する必要があります。
ここまででも大変ですが、退職日に健康保険証を回収できたとしても、会社側は、退職日から5日以内に管轄年金事務所に健康保険と雇用保険の保険者として資格を喪失したことを連絡する必要があります。
この処理が遅れると、転職先企業が、同じ健康保険組合だった場合、登録することができなくて、健康保険証の発行ができないなど、いろいろな会社に迷惑をかけることになります。
なのでこの処理は遅滞なく素早く処理する必要があります。
ただ、素早く処理する必要がありますが、今の会社は、ほとんど電子的に処理しますので、退職の事実さえ知っていれば、年金事務所にすぐ連絡することができます。
昔は、紙で1枚1枚かいて、郵送していたそうなので、大変だったみたいです。
ただ、私は何度か退職者の転職先企業様からご連絡を受けたことがありますね…
この連絡を受けると、すぐ処理しますが…
そもそも退職の事実を知らなかった場合もあり、二重にびっくりした記憶が有ります。
「やめてたんかーい!」と、オフィスで1人でツッコんだ記憶が鮮明にあります。。。
雇用保険
まず、退職者には、退職日に雇用保険の資格証(入社して退職するまで雇用保険に加入していたという証明書)を渡します。
雇用保険の場合、退職日から10日以内に雇用保険者として資格を失ったことを報告する書類を管轄ハローワークに提出します。
このほかに、退職者が離職票を希望する場合には、離職を証明する書類も提出する必要があります。
提出するとハローワークからいわゆる離職票というものが送られてきます。
この送られてきた離職票を退職者に郵送し、退職者が受け取った離職票をハローワークに提出すると、条件を満たせば、失業手当を受給できます。
よくある勘違いとして、退職日当日や退職日前に離職票を求める方がいますが、ハローワークから発行されないと、渡せないものなので、離職票というのは、退職者に届くまでに多少時間がかかります。
ただ、雇用保険の資格をなくしたことや離職したことを証明する書類は、基本的に電子的処理になりますので、健康保険と同様に退職の事実さえ知っていれば、素早く処理することが可能です。
とはいえ、退職者が大量に出る年度末(通常は3月末)は、離職票の発行が遅れ気味になります。ハロワも優先して処理しますが、多少遅くはなります。
ちなみに、離職票を優先された結果、何が犠牲になるかというと…
雇用保険被保険者資格(雇用保険に入れたことを証明する書類)の取得になります。
私が体験したのは、1か月半くらい雇用保険被保険者証が発行されませんでした。
さすがに、遅いと文句言おうとハロワに電話しましたが、まずつながりませんね。
私と同じような電話がたくさんかかっているのでしょう…
みんな気持ちは一緒ということですね(笑)
労働保険
労働保険は、強制加入で従業員に負担がないものなので、退職時に手続きが必要ではありません。
労働保険料は、細かくなりますので、詳しいサイトをご覧いただきたいのですが会社が従業員に支払った賃金合計に一定の利率をかけて、保険料を算定します。
なので、従業員が関わることはありません。
所得税関係
退職者には、源泉徴収票を発行する必要があります。
源泉徴収票がないと、転職先での年末調整ができなくなってしまうので、忘れずに発行しないといけません。
ちなみに、源泉徴収票がないと、通常ですと、還付されるはずの税金(税金の払い過ぎ分)をもらえなくなってしまいますので、退職者は発狂します。
加えて、追徴だった場合には、税務署から対応して連絡が入る可能性もありますので、ご注意ください。
住民税関係
住民税は、給与から天引きされている(特別徴収)場合、特別徴収を継続するための書類を作成し、退職者に渡すか、一旦個人での支払いに変更する(普通徴収)に変更する必要があります。
住民税は、行政へ退職日の翌月10日までに提出する必要があります。
これも健康保険や雇用保険と同様に行政への報告は電子的に処理できますが、特別徴収を転職先でも継続する場合に必要な書類だけは紙媒体になります。
社内ネットワーク
入社手続き同様に、ネットワークを活用できる場面ではありますが、入社の時ほど効果はありません。
退職というのは、突然退職される場合が意外と多いです。
会社のルール(就業規則)では、大体1か月前に退職の届けを出すと規定されていることがありますが、実は法律上2週間前に出せば問題ないものです。
だからといって、2週間前に出すのは、ハラスメント行為で会社にいくのが苦痛等の場合を除いて、好ましくはありませんが…
ただ、2週間前に退職する場合、困るのは同じ部署や店舗であり、実際労務課としてはそこまで困りません。
それは、退職の処理は、ほぼ電子的に処理できるので、1日で処理が可能なためです。
ではどのような場合に困るのか…
病気で長期休職中で、連絡が取れない場合に大変困りました。。
通常、会社の規程では、休職何か月で退職させることができると記載されています。
そして、退職させる権限を持っているのは人事部か営業部の管理職になりますので、一方的に労務が退職させることができません。
管理職が退職を決めない場合、ずっと会社の規程には反しているが、在職しているというよくわからないことになります。
ちなみに正社員の場合、給与は0円ですが、保険料はかかりますので、毎月保険料代を振り込んでいただくことにもなりますので、振込の確認もしないいけないので、大変です。
結論としては、社内ネットワークを情報の先取りで、急な退職による業務の増加を緩和できるが、それより、一番困るのは、退職か在職か分からない人の退職処理ということになります。
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